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 今月の雑誌のブルータスで ”尊敬できる「日用品」” という記事がありましたね。
「日用品」とかっこが付いていますから人為的にして敬うのでしょう。デザインが有名であったり素材が良かったり、あるとカッコいいものが紹介されていました。
拝見すると素敵なフォルものものが載っていました。でも日用品ですので、私は尊敬という言葉は自分より上の様に思いますので、私は落ち着かなくなってしまいそうです。

 元丸屋でお勧めしている栗久の曲げわっぱは、紹介されていなかったのは幸いだったかもしれません。日常の愛する道具として紹介して来ましたおひつや弁当箱ですから、自分の一部みたいなパートナーです。

確かに凄い点はあります。素材の天然秋田杉は250年も育っています。冬期マイナス10℃ぐらいから夏期35℃ぐらいと一年間の四季を通じ40〜50℃の変化の中育ちます。素晴らしい柾目は、見た目の美しさばかりか、天然秋田杉の細胞は実に細やかでその中の空気が断熱性をもたらしています。曲げわっぱのリングカップに熱いお湯を入れても手に取って手が熱く感じません。おわんも勿論同様です。そして、タンニン酸を含んでいるのでおひつやお弁当の作りでは、細菌が繁殖しにくいそうです。タンニン酸ですから油断すると黒く成るので注意も必要です。
悲しい事に、希少なこの天然秋田杉の国有林の伐採は、保護のため中止されました。

そんな素材の、天然秋田杉を柾目が出る様に切り出し、熱いお湯で煮て(アクが出てお湯が真っ黒に成ります)柔らかく成った柾目の板を丸め、型にはめ整形してゆきます。秋田杉は板のままだと軽く柔らかで傷が付きやすいのですが、曲げると丈夫です。しなやかでいながら辛抱強い色白な秋田美人の様です。

 日常何時も一緒にいる愛着ある道具として栗久のおひつお弁当箱は、使い手の想いがあれば一生ものになります。ただ、一生ものの捉え方が違う方もいらっしゃるのがこの頃分かりました。値段が高ければ一生ものではなく、使い手が導く心が大切だと思います。
日常の道具は、使い手が丹念に手入れや修理して育つものです。特に天然素材の道具は、道具の様子を見極めていく事で長く使えます。おひつに傷が付いても熱いご飯を入れて使っていると傷が消えてることがあります。樹の復元力です。また、曲げた表面がぶくぶくと膨らんでくるものもわずかな割合ですがある様です。どの様にして、なぜそうなるのか不明ですが、使い勝手に問題がございませんのでそのままお使い頂きたいなと思います。それが一生ものではないでしょうか。

元丸屋のお勧めは、使って愛着の持てる日用品です。どうぞ楽しくお使い下さい。

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